試合前にゲンを担いで「トン勝」ならぬ「豚カツ」を食べること・・・これは現実的にどうなのかを検証してみましょう。
〇豚カツをスポーツ栄養的に見ると・・・
豚カツといえばなんといっても「豚肉」です。
豚肉で特筆すべきは「ビタミンB1」が豊富なこと。「糖質を代謝する」とはごはんやパンなどの糖質からエネルギーを作り出すことですが、ビタミンB1はそれをサポートしています。少し脱線して「夏バテ」の話をすると、夏バテの原因は暑さで食欲が減少するためにビタミンB1の摂取量が減るのでエネルギーが作れなくなることが一因です。「夏バテに豚肉が効く」と噂される所以です。このようにビタミンB1は日常においても不可欠でかなり大切な栄養素です。
作られたエネルギーはその名のイメージする通り体力や持久力となります。そして、脳もエネルギーを必要とします。摂取したエネルギーの約3割は脳みそが消費しています。脳みそにエネルギーが行き渡ることで集中力や思考力、ゲームメーキング力が持続します。
更には疲労回復に繋がり、試合後の疲労回復を早めることも期待できます。
豚肉に含まれるビタミンB1の含有量は食品の中でもトップクラス!体力維持のために豚肉を食するのは非常に良いと言われています。
その他、たんぱく質として身体を作る役割がもちろんあります。肉の赤みが強い部分は鉄分が豊富です。鉄分は血の材料となり、血液の質が良いと持久力アップに繋がります。
一方で、気にしなければならないのは「油」です。豚肉そのものに含まれている脂肪分を気にするのはもちろんですが、加えて一般的な豚カツは小麦粉、溶き卵、パン粉などで豚肉を包んで揚げているため豚肉と衣に油が多く吸収されやすいのです。
油の多さが「試合前に豚カツを食べていいかどうか」の一番の判断材料になります。その理由として、油は胃腸の消化吸収を妨げるので必要な栄養が体内に吸収されづらくなるからです。更に消化吸収が遅いと食べたものが胃腸に残りやすくなり、胃腸の不快感が伴ったり調子を崩す可能性があります。
必要な栄養が身体に回らなかったり胃腸に不快感が残った状態で試合に臨むとどうでしょうか?食事によって防げるものが防げなかったとしたら、非常にもったいないと思いませんか?
そのような訳で、試合で実力を発揮するためには、実は試合前の油分を控えるのが基本的によいとされているのです。
〇試合前に食べる豚カツ、専門家の見方は?
私はこれまで管理栄養士など経験豊富な専門家からスポーツ栄養のことを学んできました。私が聞いた限りでは、試合前に豚カツを食べることについて専門家の見解は、賛成派と反対派が半々位だったと記憶しています。
賛成意見として「豚肉だから」、反対意見として「油を摂りすぎるから」でした。
ネットでは反対意見が多く、条件付きで反対しないという声はあるものの賛成意見は特に見つかりません。
私の意見としては「食べ方を工夫すればアリ」です。とりたてて白黒をつけるのは難しいけれど、豚肉がスポーツ栄養的に非常に良い食材だからです。豚肉が優秀な食材であること、そして「勝つ」という魅力的なフレーズで前を向けるのであればOKだと考えています。
食べ方の工夫①:食べ慣れること
試合前の豚カツを効果的に食べるためには、まず、豚カツや揚げ物系料理を食べ慣れていることが大事です。食べ慣れている料理は身体が受け付けやすくて安心感があるので身体の調子が崩れにくいです。試合前の大事な食事は食べ慣れているものの中から選んでください。
食べ方の工夫②:競技者自身にカラダと対話してもらい、競技者に意思決定してもらう
また、なんといっても食べる本人(競技者)がどう思っているか・・・が重要です。食べる本人の意思を確認してください。豚カツの長所短所を伝えた上で本人がどうしたいのか判断してもらいましょう。判断をしてもらうには、競技者自身が日頃から自分のカラダの声を研ぎ澄ませて聴いてあげることが大事です。集中しているとき、疲れているとき、楽しいとき等・・・カラダはなんと言っているか?カラダがなにを欲しているのかな?どんな気分なのかな? そんな対話ができるようサポートできるといいですね。
競技者本人にとって試合は今までの練習の成果を出す大切なターニングポイントです。もし豚カツを食べることを選択したらとびっきり美味しい豚カツを作って応援してあげてください!美味しい食事と応援が試合に向けてのパワーになるはずです。
食べ方の工夫③:食材・調理・献立の工夫でデメリットをカバー
試合前の必勝豚カツ。豚カツの弱点を少しでもカバーするためにぜひ下記の点に留意してください。
〇必勝豚カツを作るなら?
●良質の豚肉を使う(ブランド豚肉、鮮度)
鮮度の良いものやブランド豚肉は豚肉の中でも栄養価が高めです。応援の気持ちを込めて奮発してみてはいががでしょうか?
●ヒレ肉を使い、脂肪分をなるべく少なく抑える
ヒレ肉は他の部位と比較して脂肪が少なくたんぱく質と鉄分が多いので最もおススメです。柔らかい方がよければモモ肉やロースにして、脂肪が少なめのものを選んでください。
●調理上の工夫をする(衣をつけすぎない・新しい油で揚げる)
衣が多いほど油を吸収するので、衣は少なめにつけてください。また、鮮度の古い油は消化機能を邪魔して体調不良を起こす恐れがあるので新しい油を使って揚げてください。
●揚げない豚カツ
「揚げない豚カツ」でググってみると様々な工夫のレシピが出てきます。傾向として、揚げ油の代用油分としてマヨネーズやオリーブオイルを用いてオーブンやグリルで焼くようなものが多いです。油で揚げるよりは脂肪分が若干抑えられます。
●おかずに「アリシン」が含まれている食材を取り入れる。
「アリシン」と呼ばれる成分はビタミンB1の働きを助けます。アリシンはにんにくやニラ、ねぎ、玉ねぎなどに入っています。これらの食材をおかずのどこかに取り入れると良いですね。例えば玉ねぎのお味噌汁、すりおろしにんにくを使ったドレッシングのサラダなどはいかがですか?
●バランスよい食事を!
主食・汁物・主菜(豚カツ)・副菜2品以上を揃えましょう。試合前は食べ慣れたものや脂質と食物繊維を少なめに、消化の良い食事を揃えることがコツです。可能なら食べる人の好物を入れてあげると喜ばれますよね。食べる人の試合に向けてのモチベーションが上がるような食事に、応援の気持ちをたくさん乗せてあげてくださいね!
Credit
伊藤百合子さん
宮城県在住。現役秘書。趣味のテニスをきっかけに食事や栄養に興味を持ち、食の学びを開始。テニスで6年間スポーツ栄養を実践した経験などを活かし、食生活デザインコーチとしてスポーツ競技力アップや健康のため子供の成長のための食生活改善サポートをしている。また、プロコーチとしても活動中。キーワードは“バランス”。バランス感覚、安定感、柔軟性が強みであり、その人が持つ個性を背景を大切にサポートを行っている。フィットネスフードデザイナー、アスリートフードマイスター1級、等。
https://bstyle-miyagi.com/
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